読書・感想

「独白するユニバーサル横メルカトル 」

君の不安の原因がなんとかして生き延びようということであるならば、安心したまえ。君は既に死んでいる 「独白するユニバーサル横メルカトル」/平山夢明/光文社文庫 分類はホラー短編集になるのかもしれないけど、予想ほど怖い話はなかった。流血が苦手な…

「Another」

いつか……。 それはどのくらい現在と離れた未来だろう。 「Another(上・下)」/綾辻行人/角川文庫 表紙の絵柄から、ホラーなのかなと思って読んだら、ジュヴナイル小説だったようだ。

「冬そして夜」

どういう意味だかよくわからなかったが、おれは“いいよ”と答えた。 おれは言ったんだ。 “いいよ”って 「冬そして夜」/S.J. ローザン/直良 和美・訳/創元推理文庫 しなければならない大事なことがある、と言い残して夜のニューヨークに消えた家出少年。少…

「『恐怖の報酬』日記」

恐怖というのは、限りなく個人的なものだ。 私がこれから一週間後に乗る飛行機をどれほど恐怖しているか、誰にも想像できないだろう。 「『恐怖の報酬』日記―酩酊混乱紀行」/恩田陸/講談社文庫 飛行機恐怖症の著者による初海外旅行エッセイ集。

『心理学的にありえない』

「ほんとにもう孤独じゃないのね」 彼女は静かにいった 『心理学的にありえない』/アダム・ファウアー/矢口誠・訳/文藝春秋 前作の『数学的にありえない』はあまり数学と関係なかったように記憶しているのだけど、今回の『心理学的に〜』も心理学は関係な…

春を待つ谷間で

「人に聴かせるためには弾かないんです。決して。それを理解してくれる人はほとんどいない。…」 「わたしには理解できるわ」 「そうでしょうね」 『春を待つ谷間で』/S・J・ローザン/直良和美・訳/創元推理文庫リディア・チン&ビル・スミスシリーズ第六…

L change the World

私はLですから 『L change the World』/M/集英社 前回の小説が本格推理っぽかったのに、うってかわったドタバタ喜劇(サスペンス・アクションと言うべき?)だなあと思ったら、映画のノベライズなんですね。事前にあらすじをバラして大丈夫なのかな。脚…

中庭の出来事

さあ、言ってごらんなさい。いったいどう答えて欲しいの?あなたはどんな真実を求めているの? 『中庭の出来事』/恩田陸/新潮社 タイトルから、『蛇行する川のほとり』に出てくる劇の話かな、と思ったのですが全然ちがいました。女子高生が演じるような内…

さよならを告げた夜

楽園。みんなでそこへ行くはずだった 『さよならを告げた夜』/マイクル・コリータ/越前敏弥・訳/早川書房 リンカーン・ペリー&ジョー・プリチャード探偵事務所のコンビが活躍する、シリーズ第一作。 探偵業を営む男の銃殺体が発見され、妻と幼い娘は行方…

すべては死にゆく

生きていくってそういうことよ。生きていくというのは人が死ぬのに慣れることよ。それでも、耐えられない。 『すべては死にゆく』/ローレンス・ブロック/田口俊樹・訳/二見書房 前作、『死への祈り』の続編にして、マット・スカダーシリーズの最終巻にな…

蛇行する川のほとり

彼女は約束を守るだろう。そして、この約束は、彼女の少女の時間を終わらせてしまうだろう。 『蛇行する川のほとり』/恩田陸/中央公論新社 『少女七竃と七人の可愛そうな大人』(桜庭一樹)の感想に、「望月花梨の絵で読んだ」と書きましたが、こちらは岩…

夜市

約束は今日、果たされたんだ 『夜市』/恒川光太郎/角川書店 その市場では、望むものが何でも手に入る。異形の者たちが集う「夜市」に、いずみを誘った裕司の目的は…。『百鬼夜行抄』(今市子)が好きな人なら楽しく読めるんじゃないかな、と思う。

少女七竃と七人の可愛そうな大人

男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。 『少女七竃と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹/角川書店 少女漫画な、あまりにも少女漫画な甘美な一篇。黒髪、セーラー服、詰襟、一対の少女と少年、清潔でひんやりした閉じられた空間。