少女七竃と七人の可愛そうな大人

男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。
『少女七竃と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹角川書店
少女漫画な、あまりにも少女漫画な甘美な一篇。黒髪、セーラー服、詰襟、一対の少女と少年、清潔でひんやりした閉じられた空間。
つい、望月花梨の絵柄で読んでしまいました。「私のことを勝手に見ないで 二度と私のことを考えたりしないで」という『いたいけな瞳』(吉野朔実)のセリフを思い浮かべたりしながらも。
舞台の旭川は、私の記憶では清潔でがらんとした印象でした。道路が広く、雪はきちんと片付けられている。少女・七竃の「いんらん」な母親がさぞ住みにくいであろうと思われる街(でも駅寝には優しい、いい所でしたが)。
「君がそんなに美しく生まれてしまったのは、母親がいんらんだったからだ」というセリフにこめられた本当の意味に、心を揺さぶられた。『重力ピエロ』(伊坂幸太郎)を連想した、と書いたらネタばれになってしまうかな。
本当の気持ちは隠されている。七竃の母親・優奈が「辻斬り」にならなければならなかった理由も。心の底に沈み、人の形を変え、でもいつか隠し切れなくなる。