すべては死にゆく

すべては死にゆく

生きていくってそういうことよ。生きていくというのは人が死ぬのに慣れることよ。それでも、耐えられない。
『すべては死にゆく』ローレンス・ブロック田口俊樹・訳/二見書房
前作、『死への祈り』の続編にして、マット・スカダーシリーズの最終巻になるかもしれない本作。冒頭に9.11の話題があって軽く驚いた。スカダーシリーズの中にも時間は流れている。
過去の事件の話がいろいろ出てくるし、登場人物たちも確実に老いているしで、しんみりしてしまうけれど、シリーズを通して読んでいるひと以外にはピンと来ないだろう。そういう私も、エストレリータ・リヴェラのことをすっかり忘れてしまっていた。
作中の会話から考えると、2004年の6月あたりの話になるのかな(2005年だとすると変だし)。イラク戦争の話が出てこないのが不思議な感じもしますが。別に社会派の小説ではないから必要ではないと思うけれど。登場人物たちのテロリストや死刑制度についての意見は、スカダーや作者の意見とは異なるとしても、ちょっと引っかかってしまう。
死刑囚に面会を求める謎の人物の正体を、いろいろ想像しながら読んでいたら、意外と普通の解答でした。
『死への祈り』のときにも書いたけれど、やっぱり会話にキレがなくて、ブロックも疲れてるんじゃないかなとか、余計なことを考えてしまう。登場人物たちも、みんな落ち着いてしまって、最終巻の雰囲気が漂っている。
シリーズが続いて欲しい気持ちはもちろんあるけれど、また誰かが死んでしまうと思うと…。今回も、冒頭の引用から、あの人が死ぬんじゃないかとハラハラし通しでした。